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社会保険から高齢者を切り捨てる政策を廃し、適正な抜本改革の実現を

 本私学年金連では、「社会保障と税の一体改革」に代表される近来の政策には、年金と医療・介護が軌を一にして、社会保険制度から高齢者を切り捨てる悪しき意図が存在することを指摘し、社会保険制度の適正な抜本改革の実現を、政府等に求め続けてきた。

1.改革された内容は現行悪制度の維持にすぎない

 一体改革で取り上げられた各施策を検証すると、たとえば年金についての(a)デフレ下のマクロ経済スライドの適用、(b)年金支給年齢の引き上げ、(c)後期高齢者医療制度を維持する、等は現行制度の悪しき側面を維持するための手直し策である。ちなみに悪しき側面とは「現行の社会保険制度が高齢者を当該制度から切り捨てる施策を内包しており、そのため若い世代が自分たちの老後には社会保険が消えるとの不安に駆られている」ということである。

2.年金の給付水準はやがて世界最低となる

 現行公的年金制度の最大の欠点は、以下の(1)〜(5)にみるように、40年ほどかけて年金給付額を世界最低水準に誘導する仕組みであることだ。


(1) 年金制度の基盤となる経済について、百年先までインフレ(賃金上昇率2.5%、物価上昇率1.0%、積立金運用利率4.1%)が続くと決めつけている。

 経済変動は1年先の予測も難しいのが常識である。それを知りながら百年先までインフレが続くと決めつけた、全くの失政である。


(2) このインフレを利用して、年金額の算定式にマクロ経済スライド(マイナス0.9%)を適用し、65歳時の新規裁定年金を労働者平均手取賃金の50%(従来は60%)に引き下げた。

 数値でみると35万円(平成26年政府数値)の50%で17万5千円となり、1人当たり8万7500円である。既裁定年金については、従来の賃金スライドを廃し、物価スライドのみにすることをもって1年当たり1.5%(2.5%マイナス1.0%)引き下げることとした。17万5千円が20年後の85歳時には30%縮んで12万2500円(1人当たり6万1250円)となる。この1人当たり額は、かつて民主党が提言した全額税で賄う最低保障年金月額7万円、国民年金額7万円(平成16年時)を下回り、さらに国際条約で定める最低基準額7万円(労働者手取賃金35万円の40%の2分の1に相当)をも下回るので、条約違反でもある。


(3) 「平成16年改悪」により、新規裁定年金については賃金上昇率からマクロ経済スライド率を差し引くとし、既裁定年金については物価スライドのみとすることとした。ただし、賃金上昇率が物価上昇率を上回るときは物価上昇率からマクロ経済スライド率が差し引かれる。

 公的年金は所得喪失という保険事故が生じたときに保険給付されるので、高齢者の賃金といえる。従って、年金額は賃金水準の上下にスライドすることが望ましい。平成16年まではそうしていた。


(4) 政府筋は百年安心な年金制度といっているが、保険料率を18.30%まで引き上げ、年金額は世界最低水準の「全額税で賄える額」となる。

 全額を税で賄うなら積立金はそのまま残る。百年安心なのは支払財源に困らない政府であって、国民は百年の悪夢となる。


(5) 平成26年に行われた公的年金の財政検証では、「このままデフレが続くと年金の切り下げができず、高止まりする。高止まり分の年金支払いには積立金を取り崩して充てるため、その分将来の支払いに支障をきたす」という結果が出た。

 かかる事態を避けるため、デフレ下にあってもマクロ経済スライドを新規・既裁定年金の区別なく適用することとなり、今政府はその実現に向けて政策を進めている。何が何でも年金水準を世界最低にするということである。


 政府は以上の内容のうち、新規裁定年金が17万5千円に引き下がることは国民に知らせたが、既裁定年金が1人当たり7万円以下になることは全く知らせていなかった。しかしデフレが10年続いたことを受けて、この切り下げを25年にようやく明らかにした。このため、一部識者からは「制度があっても役に立たない年金では困る」と、年金者団体等からは「デフレ下でマクロ経済スライドを適用することは年金の二重引下げであり、絶対に認められない」などの意見が出始めた。これらの言論を歓迎したい。

3.消費税増税はまやかしの理由を言い立てた政治ショーであった

 政府としては「赤字財政対策に消費税率を引き上げたい」と考えていたものの、そう正直に述べたのでは国民が納得しない。そこで「社会保障に金がかかるから」との言い訳がとられた。その際、消費税率引き上げによる増収分はすべて社会保障に使うと説明していたが、平成26年度での3%増収分のうち3分の2は公共工事に使用されることとなった。「社会保障に使う」という理由付けは、まやかしであったことがはっきりした。

4.改革ではなく老人いじめそのものである

 以上みてきたように、一体改革は「老人いじめ」であるとともに、若い世代の将来への不安を一段と悪化させた。

 当私学年金連は、かつて民主党政権の菅内閣が一体改革を打ち出した時点から、こうなることを予測していた。だからこそ、これからの「超少子高齢・人口減」時代にも対応できる社会保険制度抜本改革(案)提言をまとめ、その実現方を政府・国会に陳情し、新聞への意見広告等を通じて世間にも訴えてきたのである。

 しかし、現行制度の悪質さを国民が知るところとなった現在こそ、抜本改革が本格的に動き出す起点となることを、心より願っている。



「私学共済年金」と厚生年金との統合について

 本私学年金連が長年にわたり主張し続けてきた「所得比例年金の統合・一元化」が、27年10月にその緒についた。しかし統合の中身をみると、誠に遺憾なことであったと考えざるを得ない。理由は以下のとおりである。

(1) 私学と私学共済が求め続けてきた「全私学が私学共済へ加入する」とは正反対の動きで「全私学が厚生年金へ加入する」という結果になってしまった。

(2) 今回の統合の目的は、公的年金を全て税で賄える水準まで引き下げる目的でなされたものでしかない。

(3) これまでの私学共済が、世界一手厚い年金給付と行き届いた医療給付によって、私学振興に大きく貢献してきたことは確かだが、健保・厚年に劣る点が一つだけあった。健保・厚年には全国400近くの社会保険事務所(現年金事務所)があって現地サービスができている。比べて私学共済での窓口は東京本部1ヵ所のままで、学校と年金者に細かい現地サービスができない。今回の一元化により、年金事務所のサービスが受けられるようになることを期待したが、一部を除いて従来どおりとなりメリットがない。

 以上の根拠から、今回の一元化はあくまで財界が主張する「厚生年金を廃止し、公的年金は全額税で賄う国民年金のみとする」の実現につながる統合にすぎず、喜ぶことはできない。



年金制度の統合を求め続けてきた経緯について

 当私学年金連の主張する社会保険制度抜本改革案にある「医療・介護の保険制度をすべて統合し、保険者も国一つとする」という項目に対して、関係各界の方々から多くの意見・反論等が寄せられた。そのうち、「賃金ベースが高い組合にとっては、統合により負担が上がって給付が下がるので反対である」という異論には根拠があり、その懸念は大いに理解できるものだった。

 とはいえ、かつてそのようなメリットをあえて捨て、高給与集団が低給与集団と手を取り合って創設した制度が日本に存在した。それこそが私学共済(の行う短期給付事業)である。

 私立学校教職員共済組合(私学共済)は、昭和29年1月1日に設立されている(その後平成10年に日本私学振興財団と統合して、現在の運営組織は日本私立学校振興・共済事業団)。これが創設されるまで「民間の教育・研究または調査事業」は「健康保険・厚生年金」の適用除外とされていたため、私学教職員は国・公立学校教職員に比べ福利厚生が著しく劣っていた。従来から国公立学校には恩給や共済組合(健保・厚年)があり、私学の教職員との待遇格差が存在していた。教育基本法の理念に反するこの格差を解消し、私学振興に資するため私学共済が設立されたのである。設立の法的根拠は、旧教育基本法第6条第2項の後段「法律に定める学校の教員の身分は尊重され、その待遇の適正が期せられなければならない」にあった。

 全私学が一丸となって私学共済法の成立をなしとげたが、時の厚生省は縄張りを荒らされることを警戒して「私学共済年金は厚生年金分解第1号」と決めつけた。その挙句に発足の1ヵ月前、昭和28年12月1日に厚生省は私立学校を健保・厚年への適用事業所に移行させた。この措置をみて、それまで私学共済設立の先導役を担っていた大学が相次いで私学共済への加入を取りやめて厚年へ加入することとなり、私学共済の発足が大いに危ぶまれる状況となったのである。厚年に走った多くは健保組合成立可能な大手大学等であった。その理由は、給与ベースの低い小規模学校や1事業所1人でも加入する幼稚園等と一緒に医療保険を営むと、自校で健保組合を営むより保険料が高くなって損をするからである。

 この状況にあたり、ある大規模大学が「大手が1校も私学共済へ行かないのはおかしい」という正論を述べて私学共済に加入し、設立の危機を救った経緯があった。この奇特な大学の加入があって、私学共済は辛うじて発足できたのである。

 このとき共済加入を見送った学校は約160校、教職員約4万1千人で、これが「未加入校問題」と呼ばれた。その影響は収入面にとどまらず、共済を運営する役員や運営審議会委員に主要大学の関係者がいない状況となったのも痛かった。その影響で、国庫補助率の引き上げ運動など、全私学が団結すべき場面において力が削がれたのである。かような事情により、私学共済は発足直後から、未加入校が再加入できる機会を待ち望んでいた。

 やがて日本経済の発展とともに進学率が向上して学校と教職員が増え、私学共済の財政事情は良好になった。一方、未加入校の一部では健保組合と学内年金の財政が脆弱化し、私学共済への加入を望むようになっていた。そこで昭和48年、私学の大同団結の視点から法改正がなされ再加入の道が開かれた。これを受けて130校・約2万1千人が加入したが、なお29校・約2万人が未加入のままであった。私学共済はその後も安定した成長を続け、近年では年金財政は日本一、医療・介護保険財政も健全そのものの状態を保った。私学共済が私学教育振興に果たした貢献は大きいが、なかでも私立幼稚園が多くの優秀な教員を得るための後ろ盾となって、幼児教育の発展に寄与したことは特筆に値する。

 再加入の動きがあったのと同じ昭和48年頃から、社会の少子・高齢化により将来は公的年金制度の維持が困難になるとの不安が浮上し始めた。そして昭和61年に「年金水準を大幅に引き下げる」「婦人の年金権を確立する」「官民格差を是正する」「被用者年金制度を一元化する」「基礎年金を創設する」等を内容とする、公的年金制度の大改正が行われた。これにより私学共済が抱え続けた「未加入校問題」が年金部門について、(形式的には)片付いたのだった。

 その後さらに曲折を経て、今回ついに厚生年金と私学共済が統合したわけだが、これを悲願の達成として喜ぶことができない経緯は、以上述べたとおりである。

 ついては、政府・国会、労使団体、健保組合、共済組合、報道機関等の関係者にお伝えしたい。「今こそ私学共済設立時の経緯を参考に、日本の将来のために既得権を捨てて、医療・介護制度の健全な一元化(統合)にご尽力ください」と。